電源の信頼性は一般的に故障率、MTBF、寿命、各種信頼性試験データで表されます。
(1)故障率
故障率の時間的推移を表すものとして、バスタブカーブがよく知られています。
運転直後の短い時間には、部品などの欠陥による故障率が高い期間があり、これを「初期故障期間」といいます。 部品の信頼性が十分でなかった時代には、エージング(バーンイン)によって初期故障を取り除くことが有効でした。しかし、近年は部品の信頼性や製造工程の品質が向上したため、数日間といった短時間のエージングで検出できる初期故障は無くなりつつあります。
初期故障期間の後は、ランダムに故障が発生する「偶発故障期間」が続きます。これも設計品質・製造品質・部品信頼性の向上により、年々故障率は低下しています。部品の寿命が近づくと、摩耗故障が顕在化する「摩耗故障期間」に移行します。 一般に「故障率」と言う場合は、「偶発故障期間」の故障率を指すことが多いです。
電源の故障率の算出方法には、あらかじめ定められた部品故障率を積算して求める方法と、実際のフィールドデータから算出する方法があります。前者の代表が MIL‑HDBK‑217 に基づく信頼性予測であり、部品のディレーティングを考慮しない「部品点数法」と、部品1点ごとの使用条件(温度・電圧・電流などのストレス)を反映して故障率を求める「ストレス法」 が用いられます。
(2)MTBF(平均故障間隔)Mean Time Between Failure
同一の電源の故障から次の故障までの平均値をいいます。
故障率の逆数をとって計算します。
(3)寿命
① 電源の期待寿命
ユニット電源の期待寿命は、電源内部に使用しているアルミ電解コンデンサの寿命に依存します。
また、強制空冷電源(ファン内蔵)の場合は、アルミ電解コンデンサ、及びファンの寿命に依存し、両者のうち期待寿命の短い方を電源の期待寿命としています。
ファンを内蔵していない基板単体タイプ電源の期待寿命は、使用しているアルミ電解コンデンサの推定寿命に依存します。
② 電解コンデンサの推定寿命
電解コンデンサの推定寿命は、内部の余剰電解液量と、電解液が封口ゴムを通して蒸発する速度によって決まります。この蒸発速度は、封口ゴムの材質や封口構造に依存し、さらにその速度を大きく左右するのが温度です。 従って、電解コンデンサの寿命は、コンデンサ自体の設計で決まる基本寿命と、使用環境により決定される温度条件の二つによって決まります。
※上記の推定寿命式で計算された結果は保証値ではありませんのでご注意ください。
以上から分かるように、コンデンサの使用温度を下げることが、電源の寿命を延ばす最も有効な手段です。
そのためには、電源装置の冷却を確実に行うことに加え、負荷をディレーティングして発熱を抑えて電源内部の温度上昇を防ぐことが効果的です。
なお、コンデンサの使用温度は年間平均温度でお考えください。
③ ファンの期待寿命
ファンの期待寿命は温度環境に加え、湿度やほこりの影響を受けやすく、これらは寿命を短くする要因となります。ファンは、軸受の摩耗や潤滑剤の劣化といった構造上の特性によって寿命が左右されますが、これらは一般的に温度が高いほど進行しやすく、また湿気やほこりが侵入すると摩耗や抵抗が増えて寿命が短くなる傾向があります。
そのため、ほこりの多い場所で電源を使用する場合には、冷却性能が低下しないようエアフィルタを設けるなど、使用環境の悪化を防ぐようお願いします。また、ファンは消耗部品であるため、期待寿命を踏まえた定期的な交換をお願いいたします。
(4)信頼性試験
フィールドでの電源の故障や寿命を予測・確認するためには、各種の信頼性試験が行われます。
しかし、これらの試験はどうしても加速試験に頼らざるを得ないため、実際の使用環境(フィールド条件)と試験条件の間で完全な整合を取ることが難しく、最終的には過去の実績や経験を踏まえた判断が必要となります。
電源の信頼性試験には次のようなものがあり、電源の特性や用途に応じて適切な試験を実施しています。
a. 高温放置試験
高温環境で長時間放置して電源に異常がないかどうか試験します。
通電、無通電があり、温度、時間をファクターにして行います。
b. 温度サイクル試験
周囲温度をゆっくり規定の範囲上下し、規定のサイクル数実施した後、電源に異常がないかどうか試験します。
c. 熱衝撃試験
周囲温度を規定の範囲で急激に変化させ、規定のサイクル数実施した後、電源に異常がないかどうか試験します。
d. THB試験
高温、高湿の環境で長時間通電して電源に異常がないかどうか試験します。
e. プレッシャークッカー試験
高温、高湿、高圧の環境で長時間放置して電源に異常がないかどうか試験します。
f. 長期通電試験
最高使用温度で全負荷とし長時間の通電を行い、寿命の確認を行う試験です。
g. 振動試験
h. 衝撃試験
(5)環境
一般的な電源は、MIL規格でいうところの「地上・温和環境」を前提として設計されています。 そのため、次のような環境で使用する場合には、機器の信頼性を確保するため、適切な対策を講じたうえでご使用ください。
a. 周囲温度
ディレーティングカーブで示された温度範囲までは使用できますが、期待寿命との関係を十分に考慮する必要があります。特に、24時間高温環境で全負荷のまま連続運転した場合、電解コンデンサを使用している電源では、寿命が一般に 2万〜4万時間程度となります。したがって、このような使用条件では、ファンによる強制空冷を行うか、出力をさらにディレーティングしてご使用ください。こうした高温環境での使用を避けられない場合には、いくつかの部品温度を実測することで寿命推定が可能ですので、弊社までご相談ください。
また、一般に温度が高くなるほど化学反応速度が促進されるため、ディレーティングカーブ内であっても高温状態で長時間使用すると電源の信頼性に影響を与える可能性があります。そのため、高信頼性が要求される装置での使用や、長時間の連続動作が前提となる場合には、周囲温度や測定ポイント温度をさらにディレーティングしてご使用いただくことを推奨します。
デバイス信頼性における温度影響の一例として、Telcordia SR-332※によるアナログICの推定故障率曲線を以下に示します。 このように、温度を低減することで信頼性は大きく向上します。
※Bell Communication Research が公開しているデバイス信頼度予測手法
図 8.2 推定故障率曲線
b. ガス
硫化水素、亜硫酸ガス、塩素ガス、臭化メチル(燻蒸処理)などの腐食性ガスが発生する雰囲気では、電源内部の回路パターンや抵抗器などの部品が腐食し、オープンまたはショートを引き起こして電源に障害が生じる場合があります。 また、水道水を利用した加湿器などを使用する環境では、水道水に含まれる塩素イオンが空気中に拡散することで、同様の腐食が発生し、電源に悪影響を及ぼす可能性があります。
c. 液体
導電性のある液体などが電源にかからないよう電源の配置や方向に配慮してください。
d. ほこり
電源にほこりが付着すると放熱が妨げられ、故障の原因となったり、寿命を縮めることがあります。そのため、フィルターを設置するなど、ほこりが付着しないよう十分に配慮してください。
また、環境によっては、導電性の金属粉やカーボン系の繊維・粉末が空気中に浮遊している場合があります。こうした導電性のほこりが内部に入り込むと、回路の短絡や誤動作を引き起こす可能性があり、強制空冷方式の電源では特に注意が必要です。
さらに、ほこりが堆積した箇所に水分が付着すると、マイグレーションが発生したり、導電性イオンが作用して回路をショートさせる恐れがあります。したがって、電源をご使用の際は、設置される使用環境を十分に考慮いただくようお願いいたします。
b〜d の問題に対しては、コーティング処理を施したオプションのご提供や、マイナーチェンジによるコーティング対応も可能です。ただし、悪環境下ではコーティングを施しても、これらの問題が完全に解消されるわけではなく、あくまで故障率の低減や寿命延長に寄与する程度であることをご理解ください。 最終的な信頼性の確保にあたっては、適切なメンテナンスを実施していただくことを考慮してください。







